命を守る講義とテスト

普段、皆さんは人の命が尽きる瞬間にどのくらい立ち会うでしょうか?臨床現場でのドクターやナースはその瞬間に何度も立ち会うことになります。命を守る、とは、命のはかなさを知るということ。スポーツ現場の指導者の皆様に絶対に知ってほしいのは「命の重さ」なのです。スポーツ安全指導推進機構ではドクターによる命に関わる最低限の医学知識の講義・テスト・ディスカッションを行い、意識の高い指導者を「見える化」しています。


第1回 命を守るスポーツ安全指導テスト合格者
第2~5回 命を守るスポーツ安全指導テスト合格者

第1回

◆合格者(順不同)
新田明臣、丸谷智暉、藤原正起、丹波央斗、高木温大、石井洋平、盛田裕樹、白川裕規、白井嶺虎、西田勇人、都甲洋平、増木克存、黒田哲広、林 尚祐(以上、バンゲリングベイ)
酒井進(NPSキッズカラテ・さくらカラテスクール)
勝井洋(格闘技医学会)
中嶋理(無所属)
中嶋有木(障害者格闘技イベント焔)
金山富英(サムライ整骨院)
小宮山宗(総合格闘技マッハ道場巣鴨支部)
高橋佑太(ビューラボFITLABO)
曽谷英之(TRI.Hstudio)
香田衣里(ボディ・ケア・プラン)
海老沢隆之(日本空手道連盟・武道芸舘)
新堂正忠(合気道)

第2~5回 オンライン

◆合格者(順不同)
纐纈卓真(世界全極真)
田添 洋(極真館)
清水 岳(三浦道場)
吉田 剛(圏彗會)
西園美彌(フリー)
長谷川大明(北浦和駅前接骨院)
南原健志郎(トキワ整骨院)
中野太貴(看護師)
田中伸治(格闘技医学会)
木村龍之介(カクシンハン)
織田亮介(健陽整骨院/総合武道 健陽会)
湧原忠史(武仁会)
北浦正義(フリー)
ストラッサー起一(総合格闘技道場コブラ会)
長吉友博(勇征会)
落合真一(極真会館)

合格者レポート

合格者の言葉を紹介

格闘技を始めたきっかけは、子どもと一緒に、軽い気持ちで始めたのをきっかけに、その魅力に取り憑かれました。しかし、マスターズ世代で、試合に出場しましたが、非科学的な経験に基づくトレーニングを行ったことで、数度の怪我や内科的疾患を発症し、打撃系の試合からは退き、指導の道へと進みました。

指導では、大人から子どもまで幅広く携わり、身体や技の向上、人としての成長など、格闘技が、多くの人々へ好循環を生むことを経験し、格闘技の面白さにのめり込みました。その半面、悪循環も経験し、トレーニングの専門家でありながら、魅力に取り憑かれすぎ、やる気と楽しさで、がむしゃらに取り組んでいる状況に疑問と葛藤を抱えていました。その時期に、格闘技医学会の存在を知り、飛び込みました。そこで、医科学的なアプローチから、目的に沿った動きの特性と修正、その時のコンディションに合わせたトレーニングの選択など、理論と実践を繰り返し、経験の科学ではなく、格闘技医科学の習得と指導に活かせるスキルアップの必要性を痛感しました。

 数年前からは、パラ柔術(障害をお持ちの方々の柔術)の支援も開始し、リスクがある方々の格闘技には、経験だけではなく、医科学も必要不可欠で、指導に磨きをかけなければと考えているときに、命を守るスポーツ安全指導講義の開催を知り参加いたしました。本講習会では、事前学習で頂いた資料を基に、必要な項目を学びましたが、その内容を見れば見るほど、問題意識が高まり、課題を調べ、更に現状への不安感が増しました。

 講習会&テスト本番では、初ZOOMでの開催で、勝手がわからず不安はありしましたが、参加された皆さんも緊張しているだろうと勝手に思い込み、テストには、集中力を上げて望めました。しかし、不安のピークは、答え合わせの場面でした。今、思えば、命を守る場面はいつくるかわかりません。その想定からDrが意図して、いろいろな場面で行動できるようにと環境設定していたのではと思っています・・・最高の緊張でした・・・が・・・感謝です!

テスト後の皆さんとのディスカッションも大収穫でした。いろいろな分野の皆さんが、普段の練習や試合などの活動や指導者側や受ける側の課題・問題点などを提示して頂き、その取り組みや解決方法など、課題を共有し、問題解決のヒントに繋がりました。このディスカッションでは、共通の問題意識を持っていること、皆さんの力が後押しをしてくれると思えたことは、今後の活動に活かせる力を頂きました。

スポーツは、私たちに素晴らしい効果を与えてくれます。しかし、ほんの少しの不具合が、命を奪うかもしれないこと、障害を残してしまうかもしれないことがあることを格闘技に関わる指導者、当事者、家族、支援者が知ることが必要不可欠と考えています。この素晴らしい文化を広めるためにも、命を守る活動を進めていかなければと感じています。この講習会&テストは、その第一歩です。スポーツで失う命や障害を減らし、誰でもできる、みんなが楽しめるスポーツへ進化できるきっかけにいたしましょう!

樋口 幸治さん (柔術・カラテ・パラ柔術支援 )https://twitter.com/ukiharu_y

普段は東京都葛飾区で整骨院の運営をしながら空手をメインとした総合武道を指導しております。講義を受けてまず思ったのは、指導者であるならば安全への知識を常にアップデートし続け、対策を徹底していく事はマストだという事。例え悪気がなかったとしても、知識がないことで知らず知らずのうちに子供達の命が危険に晒される事も十分考えられます。

例えば心臓震盪は強くない衝撃だとしてもタイミングさえ悪ければ発症し、命を落とす可能性があることを学びました。野球やソフトボールの球が当たった事故例がほとんどですが、空手の正拳突き、サッカーやバスケットボールのボールを胸で受けた時、子供同士でふざけあいなどでも起こった例があります。

講義を受けながら、自分自身に問いました。

目の前で実際に生徒が心臓震盪が実際に発生した時に、冷静で確実な行動を取れるだろうか?

AEDの場所は把握していて、かつ正しく扱えるだろうか?

そもそも練習メニューは心臓震盪のリスクを考慮していただろうか?

普段から子供やその父兄達に心臓震盪の存在を啓蒙できていたか?

恥ずかしながら私は全てにイエスとは言えませんでした。他にも子供の脳へのダメージについてや、追い込んだ激しい練習を続けた事で引き起こす腎障害など、命に関わる事例が思いのほか身近に存在する事、講義を聞いていて恐ろしさを感じ、それと同時に安全への意識と姿勢がいかに重要かを認識しました。

また私は以前キックボクシングを選手としてやっておりました。その時私が所属していたジムでは脳震盪を起こして倒れる程までスパーリングをする事が頻繁にありました。最初は「強くなる為には必要な練習だ」と信じておりましたが、徐々に頭痛や倦怠感を感じる様になりそのスパーリングをすること事態に恐怖を覚える様になりました。

しかし指導者や先輩達もその練習をやるのが当然であり無論反論する事は叶わない空気でした。ジムに所属する以上そのスパーリングをしない訳にもいかず、恐怖心を抱えたまま誰にも相談できる事はできませんでした。

実際にキックボクシングでの脳への打撃により命を落とすケースはありますし、パンチドランカーの様に引退後の生活に大きく支障をきたすケースも多く存在します。現役引退後15年近く経って幸い後遺症は見られませんが、今考えてもとても恐ろしく思います。

私は選手が自分の競技へ全力で取り組む為にも、スポーツは安全が保障されているのが大前提であるべきだと思っております。そしてそれを実現させる為にはなるべく多くの指導者が一定基準以上の安全面、健康面を理解し実践していく事が必要不可欠だと思っています。

スポーツは私の人生に安心と自信とワクワクを与え、生きる力を貰いました。それだけ素晴らしい物だと思っています。生徒に対してもスポーツを通して豊かな人生を歩んでいって欲しいと願い今後も指導にあたっていくつもりです。指導をすると言うことは背景に少なからず命を削るリスクがある事を忘れずに、そしてスポーツをした事を後悔する様な思いをさせない様に、安全管理を今まで以上に徹底していく所存です。

織田 亮介さん (柔道整復師・武道指導者)@ryosuke__oda

どんな指導者でも、「生徒の命を預かっている」という認識を忘れないこと、そして常に安全に対する情報のアップデートを怠らないこと。

私が現在、指導者として携わっているフルコンタクト空手は、怪我のリスクの大変多い競技です。にも関わらず、近年はジュニアやシニア層の競技熱が年々増している傾向にあります。

本来ならばそれに歩みを合わせるように、指導者の安全に対する意識やスキルが向上されていかなければならないのですが、年齢や個々の状況に見合わない稽古、また周囲の誤った熱に流され、生徒たちを危険な状況に置いてしまっている指導者、道場やジムが数多く見受けられる状況にあるのも事実です。

強くなりたいと入門したにもかかわらず、間違った、偏った稽古法により、はじめる前よりも精神的に弱く、また肉体的にダメージを負い道場を去っていく人たちを、子ども大人問わず、立場上たくさん見てきました。

そんな人たちを1人でも減らし、皆が安全に取り組むことは出来ないのか?少なくとも自分の携わる生徒たちにはその様な思いや経験はさせたくない。そんな気持ちが、今回のテストにトライするきっかけとなりました。

そして今回の講習は、本番に向けての事前学習、当日のテストももちろんですが、終了後のディスカッションの時間も大変貴重なものとなり、私自身の指導者としての知識を高めるだけでなく、命を預かるものとしての意識を高める事にもなりました。

スポーツドクターの現場目線からの意見やアドバイス、他競技、他団体の方々のご経験談は普段伺うことが出来ないので私にとって大変刺激になり、また同じ意識を持つ方々と意見を共有する事により、自分の取り組んできた事、伝えようとしてきた事は間違っていなかったのだと、より安全への配慮を認識を高める事も出来ました。

なんでもそうですが、大事なのは「きっかけ」だと思います。

指導者と呼ばれる立場の人間は、常にそのような機会に身を置き情報のアップデートを行う事。狭い世界での正解に思考を止めるのではなく、この講習を受けた事を「きっかけ」に、より安全に格闘技の社会的地位、また全てのスポーツの安全性が高まるよう、前進していこうと思います。

中村 玄也さん(極真会館 空手指導者) @genyaco

私が安全講習会を受けたいと思った理由は、救急救命士として知識を深めたかったから、そして長く格闘技と関わってきている間にリスクについて感覚が麻痺してるかも知れないと思ったからです。もう一度初心にかえってドクターの認識を学びたかったのです。

受講させて頂いて感じたのは、予想通り感覚が麻痺していたこと、今まで格闘技を取り組んできて死に至る事故に遭遇してこなかったのは「当たり前」でなく「偶然だったのかもしれない」ということです。

具体的に感覚が麻痺していた点について述べたいと思います。

1つ目は頭部への衝撃です。私もパンチや蹴りを頭部へ受けて意識が飛んだことが何度かあります。頭部へ打撃を受けて倒れた後は頭がガンガンしてふらふらする感覚がしばらく続きます。1回目にそうなったときは「自分の脳は大丈夫なのかな?」と心配でしたが、道場の先輩から「大丈夫だよ!」と言われ安心し、実際にその後も頭蓋内出血のような症状もなく大丈夫でした。その後も何回か同じような経験をして、その都度大丈夫だったので、「KOされても数分休めば大丈夫、空手家なら倒されてもすぐに立ち上がるべき」という考えさえも自分の中に確立されていました。

2つ目は胸への打撃です。10年以上前に心臓震盪が注目されたときに、「うちの道場にも少年部がいるから大丈夫かな?」と思いましたが、「でも今までもしょっちゅう胸を突き合っていたし、それに子どもたちの突きの威力で本当に心臓震盪が起こるのか?」「拳サポーターにプロテクターをつけているのにそれでも心臓震盪は起きるのか?」といった自分に都合の良い、いわゆる正常性バイアスが働いてしまってました。

3つ目は腹部への打撃です。フルコンタクト空手ならボディへの打撃は当たり前なので、ボディへの打撃で倒れてもほとんど心配しませんでした。実際に二重作先生が大会ドクターとして経験された「腹部へ蹴りを受けて腸管麻痺になった事例」に遭遇した話を聞いてゾッとしました。

受講させて頂いたことによって頭部へのダメージは「外見」では分からないこと、心臓震盪はタイミングで起こることと衝撃の強さも弱ければ起きないのではなく、衝撃の受ける側の胸郭の強さ等が関係するので弱くても十分に心臓震盪のリスクがあること、腹部への打撃にしても腹部の臓器が損傷し腹腔内出血の可能性もあること。

もちろん救急救命士としてこれらのことは知識として知っていましたが、知識を格闘技のリスクとしてリンク出来ていなかったのです。もしかすると格闘技が好きだからこそ、格闘技のリスクには目をつぶっていたのかもしれません。

でも格闘技による事故がそのままになっていれば、格闘技をやる人は少なくなり格闘技は廃れていくことに気が付きました。格闘技が好きだからこそ格闘技のリスクに正面から向き合い、格闘技と安全の交わる点を探す必要性を感じました。

格闘技をやってる、子どもに習わせている親の中にも格闘技のリスクについて感覚が麻痺している人がまだまだ多いと思います。「頭部に衝撃を受けて意識が飛んだけど、今は大丈夫だから病院には行かない」「以前も同じようなことがあり病院で検査したけど異常なかったから今回もきっと同じでしょ、だからもう病院へは行かない」、そのような自己判断があっても、今回のテストで正しい医学知識を得た私たちは、自信をもってリスクについて説明する義務があると感じています。

私は格闘技をやる前は自己肯定感が低く、どこか自信のない人間でしたが、格闘技を習うことによって自信を持つことができましたし、その後の人生を自分で切り拓くんだ!という強い気持ちを持てるようになりました。私は格闘技は習う人に自信をもたらせ生きる力を養ってくれる素晴らしいものだと思っています。

格闘技はリスクを考慮しても素晴らしいものです。多くの人に楽しんでもらいたいと思っています。だからこそ安全に配慮しつつ格闘技を楽しむ方法を模索したり、勉強していこうと思っています。

鈴木 照幸さん(救命救急士)@ts61290519

私達指導者は『先生』と呼ばれます。それは武道、格闘技をただ教えるだけではなく、指導を受ける側の心身共に健康的に強く、そして精神面も健康的に強く。更に人として、社会人として立派に成長していけるように促す事が出来るからです。

しかしながら実際にはビジネスが先立ってしまって、本来の『先生』では無くなってしまっているように感じていました、特に『命』『安全』に関しては。私はそれがどうしても引っかかっていましたが、二重作先生の著書を読んで改めて気付けました。

なので私が指導をするにあたってまずこれを学ばなければ!と思っていた時に先生と繋がれて本当に嬉しかったです。

内容としては、現役の医療従事者、格闘技医学に精通する先生のエビデンスに基づいた情報に触れる事が出来たので大変参考になりました。特に『K.Oやダウン、失神の次は死。競技なんだから本来死の数歩手前で止めるべき』の部分です。アマチュアや子供は尚更です。知りたかった事と知らなかった事が繋がり、単純に知識が増えただけではなく意識が変わりました。今後は更に競技者の命をを守る事に留意して、皆で楽しく成長していければと思います。本当にありがとうございました。

櫻田 泰さん(K1・カラテ指導者)@umiyasu134

 4歳に少林寺拳法をはじめ、柔道・空手と高校生の時には3つ同時にやるほど武道にハマり、今では空手が職業となりました。もちろんこれまでには色々ありましたが、今は武道に人生を救ってもらった者として『同じように「武道を習っていて本当に良かった」そう言ってくれる子供たちを増やしたい』という想いが強くあります。しかし、現役を続ける中でトーナメント後に横紋筋融解症で倒れ、緊急入院するなど《格闘技が持つ命のリスク》を身を持って経験したことがあり、僕が支部を任されて指導を始めた頃から、子供たちを指導する中で『本当にこの練習は大丈夫なんだろうか…』と不安を感じることがありました。
 そんな時、格闘技医学の記事を読み、自分の安全知識の無さを痛感することになります。それから『もっと安全について学ばなきゃ!』と思い、消防署などで行われている救急救命講習や上級救命者講習などを受けてみましたが、やはり僕が「知りたい」と思っていた格闘技で起こりやすい怪我や、知っておくべきリスクと対処法などの部分については、ほとんどその講習で聞くことはできませんでした。

 そして『格闘技に特化した安全を学びたい!』 という思いはあるものの『本を読むくらいでしか知識が得られない…』そうやって、ずっと抱えていたモヤモヤした想いにドンピシャリでヒットしたのが【命を守るスポーツ安全指導講習会&テスト】のオンライン化でした。見た瞬間に『これは受けなきゃ!!』と思い、すぐに申し込ませて頂きました。

 テストがあるということで、講習会の動画を見る時のモチベーションも高く保て『一つも聞き逃さずに学ぼう!』という意欲も高まり、何度も聞き直し、メモを取り、本当に沢山のことを学ばせていただくことができました。また講習会の時に聞いたドクターの話や、安全意識の高い受講者の方々のお話しからも気付きや学びがあり、参加して本当に良かったと思いました。
 「知っていれば救える命」「知るだけで減らせる命のリスク」があることが学べたことは指導者として大きな収穫であり、多くの方に知っていただきたいことでもありました。正直、空手界は『武道だから…』という甘えから、安全意識に関しては「高くない」どころか「低い」です。今回テストを受け学ばせて頂いたことを現場で活かせる指導者となれるように精進していきたいと思います。学びの機会をいただき本当にありがとうございました。

纐纈卓真さん(極真カラテ指導者)@TakKouketsu